「蜜の証拠」サルワ・アル ネイミ著者はフランス在住シリア人のジャーナリスト。
アラブの古文学における性表現と、著者の周りの人々の小噺的な閨房エピソードを絡めながら、「アラブ人の性」を著者の視点で描き出すというエロティックかつ知的探究心の詰まった小説です。
ヨーロッパ中心に世界中でベストセラーになる一方、アラブの多くの国で発禁処分になったそう。
リゾート地のビーチで、マティーニでも傾けながら(下戸なのでよく分かりませんがなんとなく)読みたいような、耽美なおもむきがあります。
個人的には、「快楽の動詞」や「24.7」のような山田詠美の著作を思い出しました。
山田詠美はサガンやアニーエルノー、デュラスなどフランスの翻訳文学の影響を受けているのでそのためかもしれません。
また家父長制への強い反発を見せながらもフェミニズムにはやや冷笑的なスタンスをとっている点も共通しており、2000年代初版である割にはレトロな気味もあります。フランス在住の著者ですが、あくまでインスピレーションの元は、著者の生まれたアラブの日常風景であると強調されています。
それでいてアラブのステレオタイプなイメージに反する内容だった事も話題になった理由でしょう。
こちらhttp://book.asahi.com/clip/TKY201009280225.html
にはサルワさんのインタビューが載っており、
「アメリカやヨーロッパでアラブ社会について語られていることが、実像とは離れていると感じていました。アラブ世界には自由で豊かな文化的世界があることを伝えたかったのです」
と語られています。
一読をお勧めします!
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